樹木葬という選択肢
さまざまな様式のお墓が認知されてきた現在、樹木葬も選択肢の1つとして知られるようになりました。樹木葬は自然葬の一種。文字通り樹木の下にご遺骨を埋葬する葬送方法で、墓標の代わりに樹木を目印としています。自然といってもお骨を粉にして撒く散骨とは違い、山林などに埋葬することは法律上不可能なので、霊園の敷地内に埋葬します。より自然に近い環境を残しているタイプから、整備の行き届いた庭園タイプまでさまざまな霊園があり、東京や神奈川では公営の樹木葬霊園も登場しました。ここでは樹木葬の費用相場、歴史、樹木葬を行う上での基本的なルールや注意点などについて、解説しますので、お墓選びの参考にしてください。
樹木葬の歴史
人類の歴史から見れば、「ご遺体を自然に還す」というご供養の形はごく一般的でした。しかし、人口が増えて都市が発展するにつれ、墓地として決まった場所が指定され、法的に管理されるようになります。現在日本では決められた場所以外に埋葬はできません。そこで、ふたたび「自然に還る」樹木葬が見直されてきたのです。
日本での樹木葬の歴史は比較的浅く、1999年の岩手県の祥雲寺がはじめました。現在は知勝院という独立したお寺として樹木葬の運営をしています。当初は荒れてしまった里山を守る目的から樹木葬を行ったそうですが、自然に還るというご供養の形を望まれる方に選ばれ、広まっていきました。現在では東京だけで50ヶ所以上、北海道から沖縄まで全国に広がりつつあります。また、横浜市営墓地メモリアルグリーンのように公営の樹木葬霊園も登場し、墓地の選択肢のひとつとして浸透しています。
樹木葬の種類
樹木葬の霊園・墓地は大きく分けて、2種類あります。1つは祥雲寺のように自然の地形を生かした「里山型」、もう1つは横浜市営墓地メモリアルグリーンのように庭園として整備された場所に木を植えた「公園型」です。また、樹木の植え方にも種類があります。1人(1家族)のご遺骨につき1本の樹木を植えるタイプと、既にあるシンボルツリーの周辺に複数のご家族がご遺骨を埋葬する合祀タイプです。合祀の場合はさらに遺骨を一ヶ所にまとめるタイプか、個々の区分けがある上でひとつのエリアに埋葬するタイプか、埋葬方法も2つに分れます。
樹木葬の費用相場
10万~100万円
屋外に墓石を建てる埋葬方法に比べると、かなり費用を抑えることができます。1家族で専有できる場合は30~100万程度、合祀であれば10~60万程度です。
樹木葬のルールと注意点
樹木葬を一般の野山で行うと「墓地、埋葬等に関する法律」の第4条の「埋葬又は焼骨の埋蔵は、墓地以外の区域に、これを行ってはならない。」に違反する場合があります。そのため、墓地として許可を受けている土地での埋葬になります。
埋葬後の注意点として、山里型や合祀の場合は雑草などの管理が行き届いているかどうかという点はきちんとチェックした方がよいでしょう。家単位の和墓と比較して自然環境を生かした山里型のお墓は、その手つかずの風景が魅力でもありますが、お参りができないほどに鬱蒼としていたら、手入れをしてもらうようにしましょう。
メリット・デメリット
樹木葬のメリット、デメリットをご説明します。
●樹木葬のメリット
1 後継ぎのないご家庭でも安心
樹木葬は個人墓として埋葬できるため、継承者のいないご家庭でも安心です。
2 自然に還る
お墓の地下に安置されるよりも、お骨を自然に還す形に近いので、自然好きの方にはぴったりの埋葬方法です。また、お参りに来られる方たちにとっても、開放感のある自然の中でご供養することは大きな慰めとなります。
3 費用が抑えられる
屋外の墓石を建てるお墓に比べると低額です。
4 散骨よりもお参りがしやすい
同じ自然葬の散骨は墓標のように目印になるものがなく、拝む対象が分かりづらいところに不安を覚える方もいらっしゃいます。樹木葬は自然葬でも、樹木という形で目印があるため、墓石と同じように拝むことができます。
●樹木葬のデメリット
1 ご親族の感情
新たに出てきた埋葬方法のため、古くからの和墓をイメージされてるご親族からは反対される場合もあります。特に合祀タイプはお参りに行っているという実感が薄いという方もいらっしゃいます。
2 合祀の場合はお骨を取り出せない
1本のシンボルツリーのもとで合祀をする場合は、一度埋葬すればお骨を取り出すことはできません。
3 お供えができないタイプも
山里型の樹木葬の場合、お花などのお供えをする場所を備えていない場合もあります。
4 山里型の管理
管理面では、山里型は雑草が茂ってしまうなどの問題もあります。
自然の中に埋葬し、お参りも野山に出かけていく樹木葬は、自然が好きな方適しています。また、費用を抑えたい方にもおすすめです。